査定金額について考えさせられる
今朝のミーティングで、スタッフから非常に興味深い報告を受けました。不動産査定に関する話です。一昨日、スタッフが訪問査定を行った際のこと。事前に簡易査定を行い、査定資料を作成して臨んだそうです。実は、そのお客様のもとにはすでに他社3社が訪問査定を済ませており、当社は4番目の査定会社だったとのこと。
通常通り査定金額をお伝えした後、念のため「他社の査定額はいかがでしたか?」と尋ねると、驚くべき答えが返ってきました。
他社の査定額は、当社よりも25%も高かったというのです。具体的に言えば、当社の査定額は2,000万円だったのに対し、他社は2,500万円という査定額を提示していたとのことでした。
この差に驚いたスタッフが理由を尋ねると、他社の説明はこうでした。「ちょうど1年前に、同じマンションの別の部屋が2,500万円で売れた実績があるから」というのです。しかし、ここで重要なのは、その「2,500万円の取引事例」と今回査定した物件の違いです。
その事例は8階部分、査定対象は2階部分。専有面積も100㎡と75㎡で異なります。さらに、新築時の販売価格を比較しても、2,550万円と1,980万円という、もともとの差がありました。このような要素を考慮すれば、単純に1年前の成約価格を基準に査定するのは無理があると考えざるを得ません。
その人の真実は「ある」
つまり、査定の考え方そのものが、当社と他3社では根本的に異なっていたのです。昨今のマンション市場に需要があるとはいえ、ここまで高い査定額を提示するのは少々楽観的すぎるのではないかと思いました。
スタッフはお客様に対して、当社の査定方法が「基本査定マニュアル」に基づいていることを丁寧に説明したそうです。しかし、売主様は納得せず、高額査定を出した3社を高く評価し、当社の説明には耳を傾けてもらえなかったとのこと。最後にスタッフはこう報告しました。
「結局、どちらの査定を信じるかはお客様次第です。おそらく、当社の査定額が低かったことで敬遠されてしまったのだと思います」と。
この報告を聞いて、私は「これはもう仕方のないことだな」と思いました。
人は、高い査定額を聞くと「自分の物件は高く評価された」と思い込みやすいものです。その後に、現実的な査定額を提示されると、まるで期待を裏切られたような気持ちになってしまうのでしょう。
ただ、今回のケースでどちらの査定が正しいかは、実際に市場に出してみなければ分かりません。不動産の適正価格とは、売り手の希望ではなく、買い手が「この価格なら買いたい」と判断することで決まるからです。
とはいえ、我々のスタンスは変わりません。たとえ理解してもらえなかったとしても、客観的なデータに基づき、事実をお伝えし続けることが大切だと考えます。今後も誠実に業務を遂行すること、それが何よりも重要と思いました。今回の出来事を通じて、改めて「人の思い込みや先入観を変えることの難しさ」を実感しました。